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はじめに
昨今,介護の社会化,病院機能の急性期化が進み,在院日数の短縮化の必要性が高まっている.退院後,在宅療養者は主体的な意思決定が求められ,病院看護師はそれを加味して入院の時点から,退院後の生活を考慮した看護を始めなければならない.しかし,日本看護協会の調査1)で,看護師の「患者ケア上の困難な問題」として「退院援助」が最も多く挙げられていることからもわかるように,退院援助は重要でありながらスムーズに進んでない現状がある.
森山は,「病棟看護婦は,病棟の業務の流れで働くために,一人の患者のために勤務時間内にあちこちと電話をかけて患者にあった社会資源を探したり,出かけていって受け入れを交渉することが難しい」2),また「急性期病院に勤務する看護婦は,多くの受け持ち患者を抱え,急性の患者がどんどん入院してくる中で,目の前の仕事に追われて意識がなかなか退院まで及ばない」2)と指摘している.筆者らも,毎日の業務に追われ十分に退院援助の時間が割けない中で,社会資源の利用やケアマネジャーとの連絡や調整をしながら,いかに退院援助を展開していくか日々模索していた.
このような状況の中,筆者らは,褥瘡ポケットを形成した脊髄損傷(以下,脊損と略記する)患者の在宅療養に向け退院援助にかかわる機会をもった.このかかわりを通して,積極的に在宅へ移行するよう援助できたという充実感があり,その一因として療養者本人の主体性が発揮されていたことが重要と考えた.石橋ら3)は,在宅療養者を対象に主体性の発揮のされ方を分析し,訪問看護師のアセスメント視点を提言している.病院での退院援助においても同様な視点を適用できると考え,これを参考に,1事例の主体性の発揮のされ方とそれにかかわる援助について分析し,有効な退院援助を検討した.
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