連載 『ケア学』の新地平 広井良典のケアをめぐる交話・6
ケアとオルタナティブ・メディスン
辻内 琢也
1
,
広井 良典
2
1早稲田大学人間科学部
2千葉大学法経学部
pp.590-595
発行日 2004年6月1日
Published Date 2004/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100471
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近代医学への違和とその対極への跳躍
広井 日本でも代替医療といわれるような,西洋医学以外の分野が注目されることが多くなっています.本日お越しいただいた辻内先生は,初め心身医学・心療内科を専門とされる内科医師であったのが,その後東洋医学や気功などの代替療法にも関心をもち,現在は医療人類学を足場に,医療やケアのあり方を追究されている方です.まず,辻内さんがこのような展開を経た経緯をお話しいただけますか.
辻内 医学部生時代の体験が原点になっています.私は精神科医になりたいという夢をもって医学部に入学したのですが,医学部教育のなかで現代医療に対する強烈な違和感を抱くようになりました.たとえば解剖学実習では,教科書の解剖図どおりになっているかどうか,最後には魚の食べかすのようになるまで死体をほじくりかえして人体構造を学びます.5か月くらいの間,毎日毎日朝から晩まで,地下室でホルマリンの匂いと格闘しながらこの作業をやっているうち,ひどい虚しさを感じるようになっていきました.
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