特集 DVは女性の健康問題である
DV(ドメスティック・バイオレンス)は女性の健康問題である—心と身体に及ぼす影響
野田 順子
1
1国立公衆衛生院保健統計人口学部精神保健室
pp.561-566
発行日 2000年7月25日
Published Date 2000/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902439
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DVとは何か
親密な関係(交際中,別離後,婚姻中,離婚後など)における加害者から被害者への暴力(人権侵害的な強制力)をDVという。親密な関係は異性愛でも同性愛でもよく,子どものいる場合も多い1)。DVは個別の出来事であると同時に社会的な力の強弱関係の表現である。暴力は身体的な暴力,精神的な暴力,性的暴力,経済的暴力,対物暴力など様々な形をとる。同性愛も対象とすることにより,性を越えた弱者の人権侵害という観点が広がる。わが国では女性の人権にようやく目が向けられてきたところであり,性別を問わない暴力は将来的な課題である。
家庭内の暴力において対応が難しい点は,家族構成員の権利が対立した場合である。たとえば,被害者の女性をシェルターに保護した時,居場所を隠すために子どもが義務教育を受けられないことがある。子どもの立場から考えると,教育を受ける権利が一次的に剥奪されてしまう。精神障害の母親を治療する精神科医が,主として母親の病状に関心を払い,その子が虐待的な環境にいることの重大さを見落としてしまうことも同様の問題である。
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