招待席
絵を通すことによって,思いはより伝わる―ホスピスケアに紙芝居を取り入れて
大谷 智加子
1
Otani Chikako
1
1特定医療法人神戸健康共和会 東神戸病院 緩和ケア病棟
pp.593-597
発行日 2006年7月1日
Published Date 2006/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100321
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紙芝居は,思いを伝えるためのワンクッション
―大谷さんが紙芝居を始めたのは,どういうキッカケからだったのですか?
大谷 紙芝居以前の問題として,言葉を伝える能力というか意味に悩んでいたということが,まずあります.今の緩和ケア病棟に勤務し始めてすぐのことですが,ある患者さんに唐突に「あとどれくらいなの?」と聞かれて,ギクッとしたことがあるんです.その方は前の病院で予後6か月と告知を受けていたのですが,その6か月をもう過ぎていたので,そうお尋ねになったんですね.そのときは,「予測がはずれることもありますよ.今ある時間を大切になさったらどうですか」というような答えをしましたが,自分自身の答えがそれでよかったのかとずっと考えていたんです.というのは,自分の言葉がきちんと伝わったのか,逆に傷つけることになったりしていないかと気になっていたんですね.
そこで偶然見つけたのが,2003年6月に神戸で開かれた日本在宅ケア研究会の中の,「ホスピス紙芝居」というセッションだったんです.それは,在宅でのホスピスケアをされている南吉一先生(在宅ホスピスあおぞら)という医師が,訪問したときに患者さんとご家族の前で,『でろでろカバン』という紙芝居をするというものでした.カバンの中から患者さんの希望するものが出てきて,それをめぐってユーモアたっぷりの物語が展開されるというもので,南先生が患者さんが次にどういう物語を見たいか希望を聞いて,それを絵と物語に取り入れるので,患者さんも紙芝居作りに参加する形でコミュニケーションがとれていると感じました.
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