連載 悩めることも才能だ!―宮子あずさのお悩み外来⑥
指導と黙認,どっちが患者さんのため?
宮子 あずさ
1
1東京厚生年金病院
pp.560-561
発行日 2006年6月1日
Published Date 2006/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100311
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- 文献概要
76歳の2型糖尿病の男性への指導で悩んでいます.彼はまったくと言っていいほど,食事療法をやる気がありません.食後には大好物のまんじゅうを毎日のように食べ,常時血糖値は300を超えています.
少し控えるように言うと,「たらふく食べられないくらいなら死んだほうがまし.大好きなまんじゅうを食べて死ぬなら本望だ」と言う始末です.家族の希望もあり,がんばって指導してきましたが,最近はその家族も「好きなようにさせていい」とあきらめムードです.
まんじゅう禁止は,彼のQOLを著しく下げることかもしれませんし,ましてや高齢ですから,好きなものを食べさせてあげたい気持ちもあります.でも,それでは医療者として手抜きのような気がして悩んでしまう.そんなことを考えるうち,看護のやりがいって何だろうと壁に当たってしまいました.(30代女性・外来)
拝読しながら6年前の春に昇天した父のことを思い出していました.父は,60代半ばで糖尿病を発症したのですが,まったく食事療法は守れず.若い頃に獣医の勉強をしていて注射は得意だったので,早々にインスリン療法を導入しました.それでも血糖は常時高め.その後肝臓がんになって,享年は72歳でした.この間,酒は飲むは甘いものは食べまくるはのやりたい放題.がんにならなければならなかったで,私の悩みは続いたことでしょう.
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