- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
・呼吸器リハビリテーションの意義
従来,呼吸器リハビリテーション(pulmonary rehabilitation;以下,PR)は,慢性閉塞性呼吸器疾患患者(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)に用いられてきた.その有効性から,COPD以外の慢性呼吸器疾患(間質性肺炎,嚢胞性線維症,気管支拡張症,胸郭形成不全症)に応用されるばかりでなく,神経筋疾患や周術期の機能回復,その他の重症呼吸器疾患に対しても適応できることが示唆されている.PRは,けっしてそれぞれの呼吸器疾患を完治させるものではないが,原疾患に対する薬物療法の効果を補完し,患者のQOL改善に役立つという利点を有する1-2).
・高齢者看護における呼吸ケアの重要性
医療対象者の高齢化により,中でも呼吸器疾患を合併する高齢者が増え,急性あるいは慢性呼吸器疾患による死亡者数は死亡者全体の10%程度に上る.この数字は,悪性新生物,心疾患,脳血管疾患に次いで多い.何らかの医療を必要として入院した患者は,症状として喀痰排出困難を訴えることが多く,入院中の経過は呼吸状態や日常生活動作(ADL)によって左右されることから,急性・慢性呼吸器疾患合併高齢者における呼吸ケアは非常に重要である.
急性肺炎のみならず,臥床しがちな高齢患者の喀痰排出困難は肺炎を誘発する恐れがあり,慢性呼吸器疾患患者は,常に生命の危険に脅かされている実情がある.そのため,肺炎予防は必要不可欠であり,このことが安楽な呼吸を維持することにもつながる.
・看護として行なえる呼吸理学療法の種類
PRは,広くは原疾患の診断・治療・患者サポート・患者教育のもとに,理学療法の手法を多用して行なわれる呼吸管理療法全体を指して言う1).
このように,PRは社会的なサポートも含めた非常に多様なケアを含有する概念であり,中でも運動療法はPRの中核をなす手技である3).運動療法は患者の自発的運動のほかに,主に呼気を徒手的に助けることを主眼としており,このような呼吸器系の運動療法をとくに呼吸理学療法(chest physical therapy;CPT)と呼ぶ.中でも,スクイージング(squeezing),パーカッション(percussion),バイブレーション(vibration)などは,看護師が現場で取り組める手技の代表的なものであり,その応用性は広い.
ただし,CPTは安易にすべての患者に行なうのではなく,適応を限定すべきである.実践にあたっては,禁忌症例も含めて事前の検討が必要であり,試行後の評価も重要である.さらに,幾分の技術を要する手技であり,熟達した理学療法士と十分な連携をとりながら施行することが望ましい.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.