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はじめに
・子ども虐待予防における看護職の役割
看護職は子ども虐待において,「予防と早期発見」「子どもとその親への治療的ケア」という,相互補完的な役割を担える職種である,と早くから指摘されている1).わが国においても,子ども虐待に対する関係職種や市民の認識がかなり変化し,看護職への社会的期待が近年とみに大きくなりつつある.そこには,子ども虐待に対する認識に変化が生じたことが影響している.その変化とは,子ども虐待の大半は乳幼児期に発生し,その多くが子育てにおいて誰しもが感じるストレスの延長上にあり,子ども虐待への対策は,「予防こそが最大の戦略」との考え方が高まってきたからであろう.
看護職は,母子に最も近い場所にいる専門職である.出産のほとんどが病院・診療所となった現在,助産師はすべての親子に接しており,保健師は乳幼児,養護教諭は学童の健康を第一線で守っている.看護師は病院において,親子の側でケアしている.つまり,看護職は,子育ての最中にある母親とその子どもにさまざまな状況で関わりをもてる職種だから,母親やその子育てに支援が必要かどうかを容易に判断できる立場にあるのだ.換言すれば,初めて親になる人たちと同じスタートラインに立つことから出発し,共に歩み続ける職種であるし,最多の人的資源でもある.また,看護職自体においても,子ども虐待予防のさらなる役割遂行のため,いっそうのチャレンジが必要であるとの認識も高まっている2).
しかしながら,この役割は看護職だけでは決してうまく機能しない.関係職種・関係機関との連携こそが要であり,それなくしては役割を遂行できない.
・子ども虐待の予防・ケアにおける連携の効果
子ども虐待予防は,各関係職種・機関が,<子どもの命と幸せを守る>ことに向けて,それぞれの役割責任を果たし,連携がなされて初めて機能する.このことは,大阪府においてなされた一連の調査結果からも明らかである3~5).この調査は1988年に第1回目が行なわれたが,その変化を見るためにパネル法により1990年と1993年にも行なわれた.そこでの保健所が把握できた虐待死の子どもに注目すると,第1回調査では虐待死の子どもは9.8%いたが,第2回では6.5%,第3回では2.4%と確実に減少していた.この変化に大きく影響していたのは,関係機関・職種の連携であった.たとえば,第1回当時は,保健所内においても事例検討会は皆無だったが,第3回には他の関係職種・機関を交えての検討が63%に増加していた.さらに,児童相談所をはじめとして,危機時には児童養護施設への入所や入院,保育所の利用等々の連携がなされるようになっていた6).
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