招待席
栄養管理が拓く可能性―愛情あふれる真のチーム医療実現のために
東口 髙志
1
Higashiguchi Takashi
1
1藤田保健衛生大学医学部外科学
pp.199-203
発行日 2006年3月1日
Published Date 2006/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100042
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――東口先生は,3つの病院で栄養サポートチーム(NST)を立ち上げ,成果を上げておられます.栄養に力を入れた経緯から教えてください.
東口 私は外科医ですが,医師になってすぐの頃は主に術前管理とICUでの術後管理を担当していました.1981年当時の外科のトピックは,肝臓にメスを入れることでした.肝臓は代謝の中心ですから,できる限り合併症を惹起しないようにするためには術前術後管理に代謝栄養学や肝再生学の知識が要求されました.同じ時期に普及してきた膵切除でも,侵襲・代謝学や消化吸収に関する知識が頭の中にないとうまくいきません.また,肝がんは背景に肝硬変があるため,もともとの肝臓の状態が悪いですし,胆道が閉塞する疾患で黄疸があると,肝障害を起こします.肝臓が悪いと,当然,栄養状態は悪くなります.食べられても消化吸収できなかったり,点滴をしてもうまく代謝できなかったりして,手術前に亡くなってしまう患者さんや,術後に肝不全や多臓器障害で亡くなる患者さんが少なからずおられました.手術を受けた患者さんがみんな重症になるような凄まじい状況下で,どうすれば合併症を起こさずに,早く元気に家に帰してあげられるか,新米医師の私は日々このことを考えながら,とにかく一所懸命でした.最高10日間にわたり一睡もしなかったこともあります.とにかくいい方法はないかと考え,まずは手術前の状態をよくしよう,それには栄養管理だと.そこから猛勉強でした.
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