特集 女性と助産婦—新しいパートナーシップへむけて
今,助産婦に求められていること—妊産婦の声から学ぶ
内田 智子
1
1聖バルナバ病院
pp.278-283
発行日 1991年4月25日
Published Date 1991/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611903274
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昨年10月,第22回ICM大会が盛大に開催された。この原稿を執筆中のわずか3ヵ月前のことであるが,今でもあの時の感動と数多くの刺激は脳裏に焼き付いている。世界中の助産婦が貧困や闘争という厳しい社会情勢の中でも,助産婦の自覚と誇りを持って自らの仕事を誠実に行なっていることを知り,経済大国,豊かな国ニッポンに住む我々は,果たしてその任務を遂行しているのか疑問に感じた。
数多い講演の中で特に印象に残ったのは,ロンドンの開業助産婦ニッキー・リープさんの発表である。“The Less We Do, The More WeGive”「何もしないほど与えるものは多い」と題されたこの講演は,「出産において真の専門家は助産婦ではなく母親である。助産婦は五感を生かして妊産婦に接し,絶対に必要だという場合にしか介入しない。常に妊産婦の傍にいて気持ちを一体化させることが重要」と強調した。助産婦と妊産婦の関係はいかなる場合においても平等であると主張する彼女は,分娩体位も産婦の希望に任せ,母親学級では妊婦同士の団欒の場に助産婦が同席している,といった徹底した妊産婦主体の援助を実施している。知識と技術の提供以上に「愛」をもって妊産婦に接してほしい。そうすれば必然的に平等な関係になる。簡潔に言うと,講演の主旨はこういうものだった。
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