特集 周産期の糖尿病ケア
糖尿病合併産婦から出生した新生児のケア
豊田 淑恵
1
1東海大学健康科学部看護学科
pp.824-828
発行日 2002年10月25日
Published Date 2002/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902965
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はじめに
1994年2月号の『助産婦雑誌』の特集「妊娠糖尿病妊産婦のケア」のなかで,福井は「妊娠糖尿病は臨床上最も多く遭遇するからこそ,助産婦は正しい知識をもって妊婦のケアを行ないたいものである」と述べている1)。ところが,昨今の大学病院や市中の総合病院において感ずることは,産科外来や産科棟で糖尿病合併妊婦に出会うことが少なくなったということである。このことは,専門医などとの併診により,妊娠以前から血糖コントロールが十分行なわれるようになったことを意味しているのであろうか。
本稿を執筆するにあたり,新人助産師であった今から25年ほど前の忘れがたい,そして悲しい出来事が思い起こされ,改めて身の引き締まる思いがした。それは,深夜勤務で引継ぎを受けたあと,管理目的で入院されていた妊娠36週の糖尿病合併初妊婦をラウンドしたときのことである。胎児心音を何度も何度も確認したが聴取することができなかった。母体が摂取したブドウ糖やタンパク質(アミノ酸),脂肪(遊離脂肪酸)などの栄養素は,胎盤を過して胎児に運ばれるという知識はあったのだが,今振り返ると,妊婦の糖尿病コントロールの状況を十分に把握していなかったという反省がある。この辛い体験の裏には,助産師として,糖尿病と妊娠・出産について,決定的な知識不足と経験不足があったことは否めない。
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