特集 スタンダードとしての母乳育児を科学的・効果的に援助するために(下)
リラクテーション(母乳復帰)
武市 洋美
pp.546-551
発行日 2002年7月25日
Published Date 2002/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902907
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はじめに
出産したが母乳育児をしていないか,母乳育児を中断した女性が,いつ中断したかにかかわらず再度母乳分泌を誘発し,自分の子どもまたは養子に母乳を再開すること,これをリラクテーション(母乳復帰)という。induced lactation(乳汁分泌誘発)とは妊娠することなく,母乳育児をするために乳汁分泌を誘発する方法である(このリラクテーションとinduced lactationの言葉の定義は,研究者によって異なる)。過去に自分自身の子どもを母乳育児した女性が,次に養子を母乳育児するときもinduced lactationと呼ぶ場合もある。ここでは,子どもを出産したことがある女性について,その女性が母乳育児をしているのが,彼女の出産した児か否か,また,最後の妊娠からどれくらい期間が空いているかにかかわらず,母乳による育児を再開することをリラクテーションと呼ぶ1)。
女性が妊娠中から産後までの間,適切な援助を受け,出産後すぐに母乳育児を始めることができれば,リラクテーションの必要はほとんどないはずである。しかし現実には,病気や早産,早期の人工乳開始,不適切な指導などのために母乳育児が困難になり,リラクテーションの必要のある母親が存在する。また養子を育てる場合,リラクテーションやinduced lactationは,栄養だけでなく,親密な母子関係を築くために最良の授乳法である。
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