特別記事
第1回「出産のヒューマニゼーション研究会」シンポジスト感想記
井上 裕美
1
,
戸田 律子
2
,
中根 直子
3
1湘南鎌倉総合病院
2JACE
3日本赤十字社医療センター
pp.151-153
発行日 2001年2月25日
Published Date 2001/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902588
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人間らしさを取り戻す糸口
お産に人間らしさを取り戻したいという願いはお産にたずさわる私たち皆の心にあるにもかかわらず,それを実現することはなかなか難しい。医療の高度化と科学の発展は昔からあるお産に対するいろいろな考え方を変えてしまったし,現在もなお,お産は変わろうとしている。
人のゲノムの85%がその概要が解析され,将来異常遺伝子のない,そして身長から髪の毛にいたるまで,親の要望に合わせたそんな子供が生まれる(造られる?)可能性があると言われる。しかしそうした「デザイナー・チルドレン」の誕生を将来我々は求めるのだろうか。そしてそれらの事を認めるのだろうか。その時「その子」のお産はどんな形態をとるのだろうか。これが空想の物語ではないのは,今の不妊治療をみれば推測できる。「子供を欲しい」と言う不妊夫婦の熱望が次々と次なる願いとなって進行しているではないか。そしてそれが妊娠,お産,そして生命とは何かといった考え方に多くの影響を与えている。もちろんこれらのことだけではないのだが,多くのお産の医療従事者はきっといまあるお産の現場で遭遇し,解決できず途方にくれているだろう多くの問題を抱えていると思う。なぜって,このように納得する間もなく進む周産期の考え方が変化しているから。もしこのような延長線上に将来のお産があるのなら,今回の出産のヒューマニゼーションを求める皆の集まりはフリースタイル出産を考えることで,これからのお産に少しでも多く人間らしさを維持し続け,そして人間らしさを取り戻せる糸口になるのではないだろうか。
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