特集 21世紀のいのち
「いのち」について周産期臨床心理士の考えること—いのちの光と影をともに抱えたい
橋本 洋子
1
1聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院周産期センター
pp.45-50
発行日 2001年1月25日
Published Date 2001/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902566
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私の考える「いのち」
「いのち」とは何か,という定義や哲学的考察は専門家にまかせて,私は,周産期臨床心理士として赤ちゃんと家族に出会う中で,日々実感していることをお話ししていきたいと思う。とは言っても,私自身は「いのち」を一体どのようにとらえているのか,あらためて言葉にするところから始めよう。
「いのち」とは唯一無二の存在である。同じ遺伝情報をもつ一卵性双生児であっても,環境との相互作用によって胎内からすでに異なる存在となる。ひとつひとつが決して代替のきかない,まさにかけがえのない存在なのである。時間軸で見ても,「いのち」は常に変化し続け,一瞬たりとも同じではありえない存在である。「いのち」は厳然として個の営みであるが,共に生きる他の「いのち」との関わりなしには生存しつづけることができない。そして,ひとつひとつの「いのち」は,連綿と続く「いのち」の流れの中にあり,流れをつなぐ一個でもあるのだと,私は考えている。
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