特別寄稿
ドメスティック・バイオレンスと女性の人権
原田 恵理子
1
1東京都女性相談センター
pp.792-797
発行日 1998年9月25日
Published Date 1998/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902013
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
「夫は帰ってくるなり,『夕飯の用意ができていない』と責め立て,私の顔,頭,背中,腰を殴る,蹴る,髪の毛をひっ張り引きずりまわす—力いっぱいの暴力の連続。何ひとつ抵抗できませんでした。『やめて』と言えば,さらに暴力なので言えませんでした—自分より弱い者に暴力をふるう人間,暴力を見て見ぬふりをする人間が許せません」。この女性の夫は,救急車を呼んでほしいという訴えを「そんなみっともないことができるか」と無視した。彼女は,背骨の損傷,肋骨骨折,全身打撲という大怪我を負い,背骨の損傷に現在も苦しんでいる(DV研全国調査から)。
このような夫の暴力は,長い間,家庭内のプライベートな出来事として「夫婦喧嘩は犬も食わない」などと軽視され,時として「暴力ではなく,愛情表現だ」などと免罪されてきたが,近年,ドメスティック・バイオレンス(domestic violence,以下DV)=女性の人権侵害,として社会問題となりつつある。
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.