連載 とらうべ
行きつけば研究
芦田 千恵美
1
1愛染橋病院
pp.275
発行日 2000年4月25日
Published Date 2000/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902378
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私の勤務する病院では,妊娠中に成人T細胞白血病(ATL)ウイルスの抗体検査を本人の同意のもと,ほぼ全員に実施している.以前勤めた病院では実施していなかったので,一体どんなウイルスで,感染するとどんな病気になるのか,ほとんど知らなかった.知人の細菌学者に聞いてみた.「主な感染経路は母乳.感染後,40年以上の潜伏期を経たキャリアの数%がATLを発症する.ATLの予後はあまり良くない.母乳を禁じることによってキャリアは減少傾向にある」とのことだった.
潜伏期,発症率の数字から,なんて厄介なウイルスと苦々しく思った.けれど,最もせつなかったのは,それが母乳で感染するという事実だった.
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