特集 EBMにもとづく周産期ケア
EBMの歴史と概略
福井 次矢
1
1京都大学大学院医学研究科臨床疫学
pp.1021-1028
発行日 1999年12月25日
Published Date 1999/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902299
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Evidence-based Medicine(EBM)とは,「入手可能な範囲で最も信頼できる根拠を把握した上で,個々の患者に特有の臨床状況と患者の価値観を考慮した医療を行うための一連の行動指針」である1)。医療の内容が,一人ひとりの患者に特有の疾病,併発疾患,既往歴,家庭や職場の状況,精神心理的状態,人生観など,非常に多くの要因を考慮した上で決定されるのは当たり前のことで,これまでもそのように行なってきたのではないか,何をいまさらEBMなどと大それた名前をつけて騒ぐのか,と疑問に思われる読者もおられることと思う。しかし,ここ2,3年,わが国の医療・看護界で急速に広まりつつあるEBMは,近年の情報化社会で初めて可能になった電子技術と臨床疫学を基盤としていて,学問としての広さと深さ,そして今後の医療・看護にもたらすであろう重大な影響力を内包するものである。
本稿では,EBMがどのような歴史的経緯で提唱されるようになったのか,そして具体的な手順はどのようなものなのか,などについて概説する。なお,EBMの概念と行動指針を看護の分野に応用することを,厳密にはEvidence-based Nursing(EBN)という。
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.