研究・調査・報告
育児を支援する保健指導—ある産科診療所での試み
蔵本 美代子
1
1祖川クリニック
pp.807-812
発行日 1998年9月25日
Published Date 1998/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902015
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はじめに
近年,全国的に分娩数が減少し,女性が一生の間に産む子供の数を示す合計特殊出生率は年々低下し,平成9年は1.39となった。平成10年度の厚生白書では,少子化の到来による社会状況への影響を述べるとともに,その要因等への対応として,多様な価値観をもつ男女が共に子育てに夢と責任を持ちながら新しい家庭を築いていけるように,社会全体で支援していくことが大切ではないかと分析している。このような時代の流れの中で,妊婦自身の考え方にも変化が見え始めている。少ない分娩の機会をより満足できる出産にしたいと望み,よい母子関係をスタートさせたいと願っている。
ところが,実際には身近に子育てをする母親を見たり,接したりする機会が少なく,赤ちゃんを抱くのは自分の子どもが初体験であったという産婦が意外に多い。また,核家族化がすすんだために子育てに不慣れな産婦を支え,励ます援助者が身近にいないために,必要以上に神経質に児に接したり,些細なことで戸惑ったり,不安になったりして,精神的にも肉体的にも疲労してしまう母親が増えている。母親にとっても,また児にとっても,良い環境が保てなくなる状態が起こりやすくなっている。
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