特集 母乳育児成功のコンセプト(上)
母乳・家族・地域—現代の母親が生きる環境
南部 春生
1
1朋佑会札幌産科婦人科
pp.768-773
発行日 1998年9月25日
Published Date 1998/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902009
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はじめに
いつの時代もわれわれ人間は,ヒト新生児を母乳で育てることに異論を唱えることはなく,ごく当然のこととして伝え続けてきた。また妊婦のほとんどがそれを願い,そうありたいと希望し,しかし実際はどうしてこんなにも悩むことになるのかと不安を覚え,いとも簡単に混合もしくは人工乳を選択し,時にはこのことに罪悪感すら抱いて医療保健スタッフにその不安を訴えてくる。
図1はこれまでの60数年間の北海道における生後1か月時の母乳率の推移をみたものである。これをみても明らかなように,ほぼ80%を推移した母乳率は,昭和40年以後急激に低落傾向をみせ,昭和45年には20%と極めて低値を示した。母乳率の低落に危惧を感じた各施設では,改めて母乳の科学的意義などの研究の末に,ようやく上昇傾向を示すに到った。この間も母乳支援への熱心な取り組みにより,80〜90%の高値を示す施設があり,筆者らの施設においても中間値を上昇しながら,ようやく80〜90%の当然と思われる母乳率を維持するに到った。そのような効果を示すようになった要因は,1989年にユニセフ・WHOが共同勧告した「母乳育児を成功させるための10カ条」を忠実にクリアすることに尽きる。
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