研究・調査・報告
社会病理現象としての児童虐待問題へのアプローチ
平田 伸子
1
1福岡県立看護専門学校助産学科
pp.339-344
発行日 1998年4月25日
Published Date 1998/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901919
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はじめに
1961年,米国小児科学会においてケンプがBattered Child Syndrome(被虐待児症候群)として,死亡率の高い乳幼児の身体的虐待を取り上げて以来1),児童虐待は欧米では福祉だけではなく,医療・保健分野でも多くの関心が集められるようになった。
わが国においても現在,親による児童虐待が増加傾向にあり深刻な問題となっている。しかし,親による児童虐待は,近年になってからの社会病理現象ではなく背景の違い(さまざまな学歴,階層,経済状態)はあるが,昔から存在していた。ただ最近にいたるまで,問題が問題として見なされてこなかっただけのことである2,3)。こどもを虐待する親の多くが,かつて子どものときに親からの虐待を経験しているとの報告が多くなされている。児童虐待は一方で,子どもへの「しつけ」の延長だとする親の論理があり,表面化しないケースもかなり多いものと考えられる。
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