連載 とらうべ
出生前診断をめぐるふたつの現在
玉井 真理子
1,2
1信州大学医療技術短期大学部
2日本ダウン症協会生命倫理研究部会
pp.789
発行日 1996年10月25日
Published Date 1996/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901564
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子宮はもはやブラックボックスではない。広くは画像診断から生化学的方法・細胞遺伝学的方法にまでまたがる様々な方法によって,児に関する情報が胎児の段階からもたされるようになっている。こうした出生前診断をめぐって「ふたつの現在」がある。「(体外)受精卵の着床前診断(以下,着床前診断)」と,「母体血清マーカーを用いたスクリーニング(以下,母体血スクリーニング)」である。
一部の筋ジフトロフィー症を対象として国内での臨床応用が検討されている前者に関しては,①受精卵への侵襲および受精卵の廃棄などをめぐる倫理的問題が必ずしも解決されているとは言えないこと,②その手技自体が体外受精を前提にしているため不妊治療としての体外受精に関する従来の適応基準に抵触すること,③胎児異常の場合の中絶を避けることはできるが,体外受精の過程での母体への侵襲は避けられないこと,などの点を指摘することができる。
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