コーヒーブレイク
ふたつめの癌
寺田 秀夫
1
1聖路加国際病院内科
pp.632
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903335
- 有料閲覧
- 文献概要
病棟回診のある日,中年の理知的な,かつ人なつこい女性の患者を診察した.右乳癌切断5年後に全身に転移がみられ,化学療法続行中のある日,担当の外科医から突然貧血と血小板減少を指摘され,直ちに内科に入院し,急性骨髄性白血病と診断された51歳の主婦であった.
毎週の回診の度にいろいろ話し合ううちに,彼女が東京大空襲前の木場に生まれ裕福な大家族の中で青春時代を送り,大学卒業後さらにインスブルグ大学に留学し,帰国後17年間ルフトハンザドイツ航空に勤務し,入院当時はデザイナーの夫と12歳の息子の3人暮らしであることを知った.入院後,直ちに白血病に寛解導入療法を行ったが間もなく再発し,翌年10月からは激しい頭痛が出現した.その後間もなく彼女は主治医に"先生,私は骨に転移した乳癌もあるし,白血病だってとてもつらい治療で,到底長生きできるとは思っていません.だからこのまま毎日こんな苦しい治療に耐えるより,一日でも多く家族と一緒に暮らしたいのです.家に帰って思いきり眠りたいのです"と申し出た.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.