特集1 リスクマネジメント
医事紛争の防止―なぜ紛争は起き,どうすれば防げるのか?
川村 治子
1
1杏林大学保健学部保健学科
pp.840-846
発行日 1999年11月10日
Published Date 1999/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900923
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はじめに
医療のリスクマネジメント(以下,RMと略す)に対する関心が高まっている.RMの対象はもちろん,第一義的には医療事故の防止である.しかし,肉体的・心理的な弱者である患者を対象とした侵襲性の対人サービスである医療の特性から,医療事故をゼロにすることは不可能であろう.また,事故を恐れ過ぎるあまり,萎縮・防衛医療に傾くことの弊害も大きい.そこで,不幸にして事故が起きたときに紛争化させないことも,RMの重要なテーマといえる.
さて,最近の医療訴訟の増加はめざましい.年間の新提訴数で見ると,かつては10年間に約100件の割合で増加してきていたが,1990年代に入って増加の速度が早まり,ことにこの5年間では約200件も増えている.これは,単純に計算するとかつての4倍の増加率である.さらに,訴訟には至らない水面下の事例の存在を考えると,もはや,医事紛争は対岸の火事ではなくなった.
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