特集 性暴力被害と向き合う
強姦のない文化と社会をめざして—あなたは悪くない
松山 容子
1
1東京都立府中療育センター
pp.645-649
発行日 1995年8月25日
Published Date 1995/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901298
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はじめに─強姦は自然災害ではない
強姦についての会合でよく出る質問は,「どうすれば強姦を予防できるか」というものである。「それは,男が強姦をしないことです」と答えるのだが,質問者は納得しない。なぜなら彼女は,「強姦の被害に遇わないために,自分はどうしたらよいのか」を聞いているからだ。そのたびに私は,強姦への偏見の根深さを痛感する。
質問はまるで,「地震から身を守るには,どうしたらよいだろう」というのと似ている。しかし強姦は自然災害ではない。地震は人知を越えた天災であるが,強姦は「強姦してやろう」という意志を持った人間がひきおこす犯罪である。この点において,両者は根本的に違う。それなのに地震と同じように,強姦は自然発生するものとして,その存在が認められている。
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