MEDICAL SCOPE
羊水還流
島田 信宏
1
1北里大学医学部産婦人科
pp.170
発行日 1994年2月25日
Published Date 1994/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900971
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羊水の研究が一段と発展したおかげで,産科の臨床医はその成果をふまえて,多くの新しい技術を分娩中の診療にとり入れることができるようになりました。分娩中の胎児仮死に対する人工羊水の投与による子宮内胎児仮死蘇生術などは,その代表的なものといえるでしょう。こういった技術が少しずつ改良され,新理論も加わってくると,次から次へと応用範囲がひろがってきます。
そのひとつに,今月号の表題の羊水還流があります。これは,たとえば妊娠27週で破水してしまったような症例にPROMフェンスを装着することがよくありますが,羊水が混濁してきたり,あるいは細菌感染の状態が悪化していると孝えられたりしたら,子宮の中の羊水を除去して新しい人工羊水を注入し,子宮内の羊水を入れかえようという試みなのです。ちょうど,生まれた新生児が血液型不適合妊娠のための胎児溶血性疾患に罹患していて,交換輸血で血液の大部分を入れかえるのと同じように,子宮内の羊水を還流して入れかえようというものです。そうすれば子宮内の羊水はきれいになるので,もう少しの間胎児を子宮内で育てることが可能となり,胎児の成熟も期待できるというものです。こんな妊娠中期以後のPROM(前期破水)の症例での羊水還流は現在でもかなり実施されており,好成績をあげています。
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