Medical Scope
羊水量の測定
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.355
発行日 1991年4月25日
Published Date 1991/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611903289
- 有料閲覧
- 文献概要
先月にひきつづき羊水の話をしたいと思いますが,今月は妊娠中の羊水量はどのくらいで,どのくらいを正常範囲と考えたらよいのかという疑問についてです。結論から先にいいますと,この問題に関しては今もって世界中の誰もが納得のいく解答がないのです。羊水はどこから出現してくるのかという点に関しては,妊娠のごく初期は羊膜を通しての母体体液の流出であることはわかっています。そのために,その頃の羊水は母体の血漿にそっくりの成分をしているわけです。一方,羊水中に胎児が尿を排泄するのは妊娠20週頃からで,これ以後は胎児の尿がだんだんと羊水の大部分をしめるようになります。したがって,妊娠末期になると羊水中には胎児の尿の成分であるクレアチニンが増量してくるので,これを定量することで胎児の腎の成熟度を判定することもできるわけです。
こんなことはわかっているのに,羊水の全体量は妊娠何週のときはどのくらいあるかといった,羊水量の測定結果はあまり研究されていません。いままでの研究は,ある化学物質や放射性物質を用いて,これを羊水中に投与し,その稀釈度をみて羊水量を推定するという方法が多いのですが,これではどうしても実際の量より多く結果がでてしまう傾向があります。ある研究では,妊娠15〜16週は239ml,25〜26週で669ml,33〜34週で984mlとピークを示し,40週前後では836mlと減少し,41〜42週では544mlと報告されています。
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.