特別寄稿
臨床乳房マッサージの実際—東洋医学の視点より
川名 律子
1
1(財)東洋医学技術教育振興財団
pp.668-677
発行日 1992年8月25日
Published Date 1992/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900631
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はじめに
さる1988(昭和63)年に,筆者は帝京大学附属病院産婦人科(主任 新井 清教授)の派遣研究員として,臨床体験過程で産褥婦70例を対象に全身愁訴の研究を行なった。対象産褥婦の年齢は,20〜30歳が51.4%,31〜40歳が45.7%,41歳以上が2.8%で,そのうち初産婦は45.7%,経産婦は54.3%であった。また,健康に異常のない者は62.9%,全身貧血者(冷え症)が37.1%であった。分娩形態は正常分娩が50%,ついで切迫早産が22.8%であり,帝王切開は25.8%だった。そして,切迫早産の多くは「冷え症」を訴える患者群であった。
ここでいう「冷え症」とは,産褥婦の自覚症状を,主に東洋医学の臨床における診査法でとらえたもので,結果的には,冷え症を訴える症例と,産科領域で全身貧血の愁訴と診断された症例は一致した。そして冷え症(全身貧血),健康者ともに,肩,頸,肩甲間部のこりを訴え,頭重,頭痛,便秘,腰痛に悩んでいることが認められた(図1)。
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