連載 とらうべ
不妊症の治療に思うこと
大川 玲子
1
1千葉市立病院産婦人科
pp.93
発行日 1992年2月25日
Published Date 1992/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900500
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“毎月が小さな流産”。クライン編『不妊』の一文の表題である。不妊の患者さんの心を示すにこれは決して大げさな表現では無い。基礎体温の高温期では,毎日妊娠を期待しつつ検温し,やはり月経を迎えてしまう。と間もなく次の排卵日を意識した性生活。強く意識するかどうかの個人差はあるが,不妊治療の期間にはこうしたストレス状態が持続すると思われる。不平等な医師・患者関係では話しづらい不満,社会習慣や思い込みのため,自分でも分からなかった嫌な気持ちや怒りを,ようやく女性たちが力を得て表現したのがこの著書である。医療者個人は全人的治療をめざしているとしても,患者側の提言は謙虚に受け止めるべきであろう。
私は不妊症の専門家ではないので,やや自由な立場で,むしろ患者ともなり得る女性の視点で現在の不妊治療の問題を考えてみたい。不妊治療の主に心理的な問題点を以下に挙げる。
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