Medical Scope
Rh式血液型不適合妊娠の最新情報
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.897
発行日 1990年10月25日
Published Date 1990/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900195
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Rh式血液型不適合妊娠による胎児溶血性疾患の理論については,ここに解説するまでもなく母児免疫機構のモデルとして皆さんはよく御存知の通りです。早期娩出,そして交換輸血という30年前の医療では,私たちは大変な思いをしました。12月24日のクリスマスイブからお正月の2日まで,正月休みを返上して全部で12回交換輸血をして成長した新生児の思い出は,私の生涯忘れ得ないものとなっています。
しかし,抗Dヒト免疫ガンマグロブリン製剤ができ,次回妊娠のための予防注射として広く利用されるようになって,胎児溶血性疾患の発生率は減少してきました。また,それでも発症をみるような重症例には,子宮内胎児輸血,母体の血漿交換法,さらに子宮内での胎児の交換輸血が今日では行なわれるようになり,胎児治療の面ではもっとも臨床的に発展を示しています。ことに子宮内胎児輸血は超音波断層法の発展で血管穿刺下で交換輸血もできるようになり,その効果は倍増しました。さらに,0.3%の確率で発生をみる初妊婦の妊娠中の母体感作例の予防のために,妊娠中に抗Dヒト免疫ガンマグロブリン製剤を投与する方法も開発され,初妊婦からの胎児溶血性疾患の発生は,本当にゼロになることも立証されました。
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