特別記事
現代韓国出産事情—里帰り出産の面接調査から
瓢風 須美子
1
1東洋大学大学院社会学研究科
pp.131-139
発行日 1990年2月25日
Published Date 1990/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900030
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はじめに
「里帰り出産」は日本古来の習俗であり,古い時代の婚姻習俗の異型と考えられている1)。戦前まで広く行なわれていた実家における家庭分娩は,戦後急激に施設分娩に移行した2)。その後,核家族化と交通網の発達などによって1970年頃から,姿を変えた「里帰り出産」の増加が指摘3)されるようになった。母子保健上問題にされる里帰り出産は,「相当の長途・長時間の」移動4)が問題になるが,近年の里帰り出産の実態としては大都市圏から地方の郷里へというパターンだけでなく,同じ県内,市内などの近距離の場合も多く,移動の方向性,距離の遠近などその範囲が拡大し多様化している。
筆者は里帰り出産による夫婦の長期間別居に注目し,家族の発達課題に及ぼす影響について,少数ではあったが調査を行ない報告した5)。里帰り出産は日本の歴史,家族観,夫婦のあり方に根差したものであり,歴史的・文化的背景を把握する必要を痛感していたところ,朝鮮半島においても里帰り出産があると聞き,今回,大韓民国(以後韓国と呼ぶ)で面接調査を行なう機会を得た。
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