特集 産科と小児科--看護の継続性を高めるために
産科と小児科の連携を強めるために
中林 正雄
1
,
坂元 正一
1
1東京女子医科大学母子総合医療センター周産期母性部門
pp.621-625
発行日 1988年8月25日
Published Date 1988/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207435
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はじめに
「周産期」とは,分娩を中心にその前の胎児期および,後の新生児期を指す。臨床の場で周産期死亡,周産期医療,周産期センターなど,周産期という用語を頻繁に用いるようになったのは比較的最近のことである。周産期が,このように注目されるようになった理由は何であろうか。1951年C. A. Smithが,出生を危険の多い谷を渡り越す旅にたとえ,「出生という暗い谷間」(The valley of the shadow of birth)と表現したように,周産期は長い人生の旅路の中で最も危険な道程であり,子供たちのintact survival(「無欠陥生育」)をはかるためには,この時期をいかにのりきるかが重要であり,それによって子供たちの一生が決定されてしまうといっても過言ではない。intact survivalが周産期医療における新生児側の目標であるなら,母体側においても母体救命は無論のこと,新生児に重篤な後遺症・合併症をひきおこすことなく分娩を終了させるのが医師の目標である。そのためには,母児を不可分な一体として,母児の病態を理解しながら,出生前・分娩中・出生後を通じた一貫した医療が必要であり,それが「周産期医療」と呼ばれるものである。それに携わるのは,一人の医師では到底困難であり,胎児の医療や分娩に習熟した産科医・助産婦と,新生児,小児専門医および看護婦が協力し合うことによって,はじめて可能となるものである。
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