特集 母親たちの不安を支える
話の聴ける助産婦の役割—プレグナンシー・カウンセリングを考える
利島 保
1
1広島大学教育学部心理学科
pp.1012-1016
発行日 1987年12月25日
Published Date 1987/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207274
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周囲の力がお産を可能にする
小林登・国立小児病院長を班長とする厚生省特別研究班の「母子相互作用研究」班員であった筆者が,毎年行なわれる研究報告会に参加した数年前のことである。大阪大学人間科学部の心理学者糸魚川直祐教授が,雌の隔離猿のお産を16ミリフィルムに収められたのを見せていただいたことがある。
この隔離猿は,糸魚川教授が研究対象としている岡山県勝山市の野性猿の群のなかで,生後すぐに親とはぐれ,飼育室で群とは別に育てられ,大きくなって再び群に返された雌猿であった。一般に,隔離されて育てられた猿は,猿の社会や猿の行動様式になじめないのが普通で,この種の猿が妊娠すること自体,珍しいことである。それで,筆者はなおのこと興味を持ったのである。
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