連載 医療ソーシャルワーカーの相談窓口から
核家族への対応
田戸 静
1
1葛飾赤十字産院医療社会事業部
pp.1036
発行日 1986年11月25日
Published Date 1986/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207013
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周知のように,わが国では,1960年代半ばの高度経済成長を契機として本格的な産業社会が到来し,それに伴って核家族世帯が年々増加していった。核家族化は,家族の有り様を変化させただけでなく,妊娠・出産・育児をめぐる状況にも大きな変化をもたらした。離婚や別居が比較的簡単に行なわれるようになったのも,核家族化の影響といってよかろう。
これら干変化は,「家」を中心とした家族から「夫婦」を中心とした家族へと,家族像が変化したことにもよるのだろうが,それよりむしろ,家族内(夫婦間)の問題をそれぞれが個人のレベルでとらえ,自己の主張を譲らない風潮に起因するといったほうがよさそうである。相手を思いやる気持ちが薄れ,ちょっとした意見の食い違いで夫婦関係にひびが入ったり,育児をめぐって言い争い,若い母親がノイローゼに陥ったりするケースをよく見かけるからである。しかも,それと気づいて相談に乗ってくれる身内や友人が近くにいないとなると,どうしても,当事者だけで短絡的に問題解決を図ることになる。もともと,意見の違いを調整しようとする気持ちは双方とも持っていないから,問題解決とは,要するに,別居または離婚ということになりやすい。しかし一方では,夫婦が自分たちの生活のリズムは崩さないで,問題を周囲にしわ寄せして,それを当たりまえと考える態度が嫌味もなく現われて,生活への甘えや依存を助長させている向きもある。
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