連載 医療ソーシャルワーカーの相談窓口から
ままならぬ感情への対応
田戸 静
1
1葛飾赤十字産院医療社会事業部
pp.1090
発行日 1985年12月25日
Published Date 1985/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206787
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人間は,頭では十分にわかっていることでも,時として,ままならぬ感情に支配されることがある。その感情は,人間が社会生活を営む過程で培ってきた生活感情ともいうべきものが,長い間にその人なりに血となり肉となって,現実の自分とは切り離されたところで,心のどこかに潜在したものといってよかろう。そして,その身についた生活感情は容易にとり除くことができない。
ワーカーは,面接場面で,対象者の話をよく聞いているつもりが,実際には十分に聞けていないという体験をすることがある。ワーカーが経験のレベルで感じていることと,潜在意識のレベルで気づいていることとの「ズレ」によるもので,その「ズレ」に気づいたら,ワーカーは,自分の理解したところ,つまり,話の内容の聞けた部分を対象者に率直に伝えていく。それによって,ワーカーは対象者をより深く知ることができるし,対象者は,伝えられた内容が自分の感情と合致することで安心し,ワーカーに本音を語ってくれるからだ。
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