連載 源流への旅
子産み子育て考・19
へその緒・胞衣(えな)—臍帯と胎盤
菅沼 ひろ子
1
,
宮里 和子
2
,
鎌田 久子
3
,
坂倉 啓夫
,
末光 裕子
4
1聖母病院分娩室
2国立公衆衛生院衛生看護学部
3成城大学文芸学部(民俗学)
4東京江戸州区・教育相談室
pp.900-905
発行日 1986年10月25日
Published Date 1986/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206982
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はじめに
自分の「へその緒」を持っているという日本人は,数多くいるだろう。現に,つい最近母親学級に参加した妊婦さんたちに質問したところ,ほとんどの人が「ある」と答えた。「わからない」という人も「たぶんいなかの母が持っているのかもしれない」のだそうだ。では,自分のこれから産む子供のへその緒はほしいですかと聞くと「う一ん」と首をかしげる人が多い。「ほしいと思っても病院じゃくれないんですってヨ」とか「気持ちわるいからいいわ」「ほしい気持ち半分,あってもどう扱っていいかわからないしねエ」等々。どうも,これから母親になろうとしている人たちは,あまり「へその緒」について意識していないようである。「あのねエ,何でも親が死んだらお棺の中に入れるんだって。だから見ちゃいけないんだって。私こわいから自分のへその緒は見たことないのヨ」という妊婦もいた。
胎盤については「いやだわ」「気持ちわるい」「ゾッーとする」という次第である。かと思えば,沖縄では,今もって病院で出産はするけれど「胎盤を下さい」といって胎盤を家族の者が大切に持ち帰るということもつい最近(本年の5月)のこととして聞いた。
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