連載 おとめ山産話
妊娠中期の無症候前置胎盤
尾島 信夫
1
1聖母女子短期大学
pp.267
発行日 1986年3月25日
Published Date 1986/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206844
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現行の前置胎盤の定義は昭和58年に(当時の事情から),内子宮口にかかっている程度によって3種類に分ける従来の臨床的方法を採用し,低置胎盤とは全く別個としたもので,いずれはもっと改善される必要があろう。胎児情報を確実に入手する手段として羊水穿刺法が用いられるにつれ,妊娠中期トライメスター(14週から27週迄)にも胎盤の位置を超音波断層法を用いて診断することが実用化されるようになり,それにつれて妊娠中期には胎盤が子宮目を覆い,あるいは接していて,前置胎盤とか低置胎盤とみなされる例が非常に多いこと,そしてその大部分は妊娠の進行につれて正常胎盤になっていくということもわかってきた。ところが1970年代の諸報告の中には,こういう中期の着床異常胎盤もかなり危険を伴うという説もある。昨年12月神奈川産婦人科地方部会と無痛分娩研究会との合同会議で,日医大の菊地教授グループが「低置胎盤と産科異常」という題で発表されたところによると,中期トライメスターに発見されたそういう例のうち,その後の妊娠中に出血したり,早産したり,帝切になったり異常経過をとるものがかなりの率に上るとのことであった。これは臨床的に重大なことで,同グループによる専門誌上の発表に期待されるが,さしあたって1984年の「AJOG」3月号に掲載された報告を紹介してみよう。
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