連載 おとめ山産話
「進入」という新用語
尾島 信夫
1
1聖母女子短期大学
pp.913
発行日 1985年10月25日
Published Date 1985/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206747
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産婦の内診はなるべく回数を少なくという方針がとられ,ことに助産婦の内診は好ましくないように書かれた教科書もあった。しかし今では消毒したゴム手袋や産科用クリームなどが豊かに入手し得るし,産婦にはっぎりした情報を告げて自主的な分娩を援助する上からも,定期的に正確な内診を行なうことはむしろ助産婦の責任とすべきであろう。
その所見の一つとしての回旋については,第1・第3が児頭の横軸,第2・第4回旋が縦軸周囲のものとすれば,児頭前後軸における軽度の回旋,すなわち児頭が骨盤内を下降してゆく際に頭を右か左のどちらかに傾けるか,あるいはまっすぐのままであるかによって,前(あるいは後)頭頂骨定位とか,正軸定位とか呼んでいた。しかし「定位」というのは,元来,高在縦定位とか低在横定位のように,病的な姿勢に児頭が動きのとれなくなった異常のことであって,これは英語ではdeep デイープ transverse トランスパース arrest アレスト(「母性看護学」日本語版,488頁,医学書院)のように,捕捉とか阻止を意味するアンストを用いてはっきり区別している。そして正軸定位はsynclitismシンクリテイズム,不正軸定位はasynclitismアシンクリテイズムと呼んで決してアレストなどは使わない。一過性に横に傾きながら進行するのに,定位をつけるのはどう考えても不適当である。
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