研究・調査・報告
伊古田純道とわが国初の帝王切開術
大友 久美子
1
1東京医科大学病院南3産科病棟
pp.624-627
発行日 1985年7月25日
Published Date 1985/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206687
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はじめに──伊古田純道との出会い
「伊古町純道。産科帝王切開術の元祖──武州大宮の人。始め郷里に開業し後上野国緑野郡藤岡町に移る。明治19年85歳にて残す。嘉永5年(1852)過大児頭の分娩困難なものに腹壁より子宮を切開して死胎児を抽出し母体を救う事を得たと報告している。或は医師として帝王切開を施した濫觴であるか。」 ──「明治前日本医学史」第4巻1)
偶然の機会に目にしたこの短文が,私(大友)と伊古田純道(図1)との出会いである。しかし,このわずか数行の文章の中に私はいい知れぬ興味を覚えた。まず純道が私が育った埼玉の人であるということであり,さらに彼が行なったという日本最初の帝王切開術が,どのような妊婦にどのような適応でなされたのか,児は,母体は,また麻酔はどのようにして行なわれたのか等々,私の職業意識は次々に疑問を喚起する。
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