特集 陣痛室・分娩室の看護
パートナーとしての助産婦—医師が望むもの
吉田 浩介
1
1賛育会病院産婦人科
pp.720-726
発行日 1983年9月25日
Published Date 1983/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206303
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はじめに
『お産革命』という本がある。この本の内容の縦糸となっているのは,日本における産科医療提供の主役とその活動の場の移り変りであろう。すなわち西洋医学(近代医学)の立場から見た産科学の進歩と第一線医療の場の変遷が,素人の目で詳しくレポートされている。申すまでもなく母子医療の最も重要な部分は周産期管理にあり,その大部分は陣痛室・分娩室がカバーすべき業務である。同書によれば,この周産期管理業務が,初めは経験をつんだ素人によって行なわれていたが,やがて免状を持った開業助産婦(助産所)の手に移り,さらに開業医師の手に移り,やがて更に病院の手に移ってきたことが述べられている。このような移り変りは,少産少死を目標にした一般社会のニードに応える福祉政策と医学の進歩,とりわけ周産期医療の高度化,それに伴う施設・設備・人力の集中化・大型化,また脳性麻痺や精神発育障害その他の不幸な結末に伴って起こる訴訟,それに対する防禦医療(defensive medicine)などが複雑に影響して起こったものと考えられる。そして現在では更に,病院の中でも周産期管理を得意とする病院,すなわち産科,小児科の機能が活発な専門病院に周産期管理業務の主役が移りつつあるように思われる。
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