助産婦の声
医師と助産婦の谷間
由利 憲子
1
1国際聖母病院分娩室
pp.26-27
発行日 1970年6月1日
Published Date 1970/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203937
- 有料閲覧
- 文献概要
はじめに
人類の生命誕生に関して歴史的にも直接の介助者となったのは,医師と呼ばれる医学・医術の備わっている者より,習慣的に経験豊かな生活の知恵者に相当する者が,これは自然の行為として携わっていた。その代表的な者が明治以降職業として認められるに至った「産婆」である。これが後に,昭和13年厚生省が設置されるとともに,今日耳慣れた「助産婦」と改名することになった。
生殖についての科学の進歩が,宗教が全ヨーロッパを支配していた頃は,ご承知のごとく特に人間の生殖に関しては,一層迷信的で謎めいて,お産する女性は下等とみられ,社会的地位も低く,また,それを扱う者もさらに卑しいものとされて,何の進歩もみられなかった。しかし,ルネッサンス以降,科学の急激な進歩とともにいままで不可解に考えられていた「性の本態」が,顕微鏡下でみられる細胞分裂や性染色体の発見などで,生命の起源である卵子と精子の分割機転が明確になるに従い,それが当然のものとして考えられるようになり,またこれが「性の解放」そして「人間の平等」につながることになった今日である。
Copyright © 1970, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.