特集 いま分娩を考える
立ち産へのトライアル
助産婦の立場から
"助産とは何が"を再考する
内布 敦子
1
1虎の門病院外科
pp.275-277
発行日 1983年4月25日
Published Date 1983/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206214
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病院の厚い壁に阻まれた立ち産の試み
先頃,助産婦の友人Bさんが,私に次のような話をしてくれました。病棟で自然分娩を推進する動きがあり,その一環として,彼女たちは,立ち産を試みたというのです。夫が妻を背後で支え,ヘソの緒も夫が切るという,まるで,つい最近,ある雑誌で見たオダン医師そっくりのやり方のような印象を受けました。夫婦共に感激し,何よりもまず,助産婦自身が,感動し共鳴したというのです。
私は,この話をきいて,たいへんいいことだと思いました。安全の点で問題がないことが確認されれば,最も良い方法であると思ったからです。そして,その方法は,安全の点でも,オダン医師の主張のごとく,ほとんど問題はないと,彼女の詳細な説明を聴き終わって思いました。私は矢も楯もたまらず,お産を終えたばかりのその夫婦にすぐに会いに行き,彼らの感動の余韻を一緒に味わわせてもらいました。父親は,「この子の一生に一度のことだから」と,感動に震える手で,熱心にカメラのシャッターを押し続けていました。この感動のエネルギーは,これからの親子間のトラブルをすべて解消する力を持っているようにさえ見えました。
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