Medical Scope
分娩前の胎児大横径計測値
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.165
発行日 1983年2月25日
Published Date 1983/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206187
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胎児の大きさ,体重を分娩前に診断する手技として,超音波断層法による胎児大横径の計測法はずいぶん前から産科の臨床に使われてきています。今日はこの古くて新しい話題のことをお話します。超音波断層法による胎児大横径の計測法は,器械さえあって,少しの修練をつめば誰でも比較的簡単に行なえる検査手技であるところから,また,妊婦にこの検査のために苦痛を与えないですむという利点から,非常に広く応用されてきました。最初は,この手技で胎児の大横径を計測してみると,おおよその胎児の体重が推測できるというメリットを一大看板にかかげていました。ところが,だんだんと研究がすすむにつれて,多くの症例を検討していくと,必ずしも,そう簡単に胎児の体重を測定することができないいくつかの問題点がでてきたのです。たとえば,IUGRです。子宮内発育遅延児というIUGRの新生児は,だれでも知っているように,体重は低く小さいのですが躯幹に比較して頭部が大きいのです。ですから大横径を計測して胎児の体重を推定すると大きめに出してしまう点などが最大の問題点だったのです。そして次第に,胎児時代の超音波断層法による大横径計測では,8.5cm以上あれば胎児体重は2,500g以上はあるだろうというくらいの推定しかできないのだというような,少し悲観的な結論しかひき出せないことを主張する学者もでてきました。
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