特集 母乳哺育の現況・Ⅱ
体験を通してみた助産婦による母乳哺育への援助—名古屋聖霊病院の母乳外来を受診して
沼田 睦美
1
1元虎の門病院
pp.668-673
発行日 1982年8月25日
Published Date 1982/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206071
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自然との戯れより学んだ母乳哺育の普遍性
娘のさやかは今年の5月で満3歳。遊びに夢中の毎日で,すり傷のたえる暇もありません。私はあり余る母乳に恵まれ,もちろん母乳哺育でした。私が母乳哺育をしたのは,ごく自然で素朴な考え方からきております。
私は小さい頃,ウサギやヤギ,ハツカネズミなどが大好きで,兄弟と毎日世話をしておりました。そのほか,庭には,鳩,チャボ,ニワトリ,池にはコイだのザニガニやらと,大勢の生き物で,それはにぎやかでした。そのうち春になるとたくさんの子供が生まれ,手のひらにのる子ウサギの愛らしさといったら,もう今でも忘れることはありません。可愛らしい子ウサギがおいしいお乳をたくさん飲めるよう,早速野原にとんで行き,良く乳ができるという草を探し歩いては,母さんウサギに与えたものです。また,生まれたての子ヤギは,まだ足元もおぼつかないというのに,たちまち母さんヤギのお乳を探りあて,コクコク吸い始めるのです。ヤギの子はヤギの母から,ウサギの子はウサギの母から,そして人間の赤ちゃんはお母さんから,母乳哺育は私にとって理屈ぬきの,まさに当り前すぎるくらい当り前のことだったのです。近所の母親たちも,大勢の子供を皆母乳で育てておりました。
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