アメリカ便り・10
Postpartum ovarian vein thrombosis—産褥卵巣静脈血栓症
佐々木 茂
1
1ウィスコンシン医科大学
pp.875-878
発行日 1981年11月25日
Published Date 1981/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205931
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■はじめに
産褥期に発症する血栓性静脈炎の代表的疾患である白股腫については,皆さんはよく御存知のことと思います。一般にわが国においては外国に比して,血栓性静脈炎または静脈血栓症の発生は比較的少ないと従来から言われていますが,しかし橋本によると,本症について関心をもち注意してよく観察をすれば,わが国でも少ないとは断言できない,ということになります。今月はこの血栓性静脈炎について興味ある症例を御紹介し,文献的考察を加えて御報告したいと思います。なお血栓性静脈炎は静脈壁の炎症性変化が原因となって血栓が形成されるものであり,静脈血栓症では血栓形成の主たる原因としての炎症性経過がはっきりせず,血液凝固性の増大が重要な因子と考えられています。このように両者がはっきり区別できるとされる一方,血栓性静脈炎と静脈血栓症とはただ病期の違いを示すものであって,結果としては同じ病態像を呈するものであると説く人もいます。そこでここではこの両者をあまり厳格に区別しないで述べることにします。
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