特集 人口問題を考える
少産少死の家族問題
石原 邦雄
1
1国立精神衛生研究所
pp.186-191
発行日 1981年3月25日
Published Date 1981/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205825
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I.はじめに
人間社会の人口現象の基本的過程は出生と死亡とによる。そうして,出生し死亡していく個々の生命体(個人)を,その当初(出生)から終極(死亡)まで,その人の最も身近な存在として見守り続ける人間関係の組織が家族である。社会の都市化・産業化が進むなかで,医療の発達にうながされて病院や産院での出産が普及し,また病院で死亡することが一般化してきた。これは重要な歴史的変化ではあるが,それでもなお,個人の生死を最も身近に意味づけてかかわりを持つのが家族(あるいは親族)であることに変わりはない。逆に言って,出生と死亡という人口学的な事象は,結婚という制度化された行動と共に,家族という人間社会の基礎的組織にとって最も基本的な出来事であり,それらのパターンの総体的な変化は家族のあり方を強く規定する要因となる。
「少産少死」という人口パターンは,いわゆる人口転換の結果であって,わが国の場合には太平洋戦争をはさむ時期にこの転換点が重なる。欧米諸国よりは半世紀ほど遅れて転換期に入ったが,転換のスピードは格段に速いというのが特徴であると言われている。日本における「少産少死」への転換が家族の問題とどのように関連するかを考える際に,次の2点を留意したい。
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