特集 人口問題を考える
インタビュー
身近に感じてきた人口問題の歴史—先輩助産婦 橋本春子氏に聞く
山下 典子
1
1三次看護専門学校
pp.172-180
発行日 1981年3月25日
Published Date 1981/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205823
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
昭和10年開業—生めよ殖やせよの時代
山下 私自身は,昭和20年,終戦の年に生まれて,戦前の歴史については直接は知らないのですが,戦争中は政府が人口増殖策をとってきて「生めよ,殖やせよ」と言われた時代だったと聞きます。いま言う優生保護,母性保護の考えも生まれていず,政府は兵力になる子供をふやせというわけですが,母親たちがどういう気持ちでそのスローガンを聞いていたのか。先生は,昭和10年に開業されたということですが,助産婦の立場で,見てきたこと,肌で感じたことを述べていただけたらと思います。
橋本 私は,昭和9年に結婚いたしましたが,それまでは勤務助産婦として働いておりまして,結婚を機会に昭和10年に東京の三鷹市で開業いたしました。今は市ですが,当時はまだ三鷹村でしたし,本当にさびしいところで,その中にあって駆け出しの助産婦としてスタートしました。駆け出しではありましたが,私の家が土地っ子でございましたので,私に対する信頼ではなくて,父や母に対する信頼というものがあったために,一般には3年ぐらいたたないと開業も軌道に乗らないと言われたんですけれども,開業した途端にお産を取り上げられるというような幸せな状態だったわけです。
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.