特集 少産時代の助産婦の進路
少産時代と出産教育
森 恵美
1
1愛育病院4階病棟
pp.287-293
発行日 1987年4月25日
Published Date 1987/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207107
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はじめに
私たち助産婦の多くは,母子看護の専門職として,施設のなかでそれに従事している。しかし,その対象である妊産褥婦および新生児は単独では存在せず,家族のなかで生活し,その家族は社会のなかに存在し,その影響を受けている。したがって,分娩前に母子看護を展開するにあたり,母子とそれをとりまく家族や社会の動向を把握することは非常に重要である。
戦後40年間に社会構造は変化し,医学は急激な進歩を遂げた。それに伴い,人口動態も著しく変化した。人口動態はその時代の社会背景・保健医療水準やそれらに対する考え方に影響されるもので,特に出生率は世相を反映している。昭和22〜32年の10年間に,出生率は世界に類のないほど著しい減少傾向を示した。昭和30年代後半からは,親世代の人口と子供世代の人口をほぼ等しく保っに足る程度の低い出生率が維持され,現在に至っている。昭和40年代になって,高学歴化に伴う女性の結婚年齢の遅れは,初産年齢の高齢化と末子出産年齢の若年化をもたらしたが,出産力の基調に変化がないことが確かめられている。昭和61年の毎日新聞の家族計画調査は,現在および将来について平均子供数はほぼ2人という少産の状態が定着していることを明らかにしている。このような一世帯あたりの子供数の減少によって,子供や家族や女性の生活周期に対する価値観が大きく変わってきている。
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