インターホン
最近思うこと
大沼 れい子
1
1下呂温泉病院
pp.505
発行日 1980年7月25日
Published Date 1980/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205741
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私は去年,三森助産院で3例の分娩に接することができた。そして,その時感じたことは「お産って,これなんだなー」という思いだった。助産婦になって約7年,思ってみれば恥ずかしいような話だが,今まで行ってきたお産が,何かサランラップに包まれたもののように感じられた。正常を逸脱しないよう,弱く,長びく陣痛は促進剤で短縮させ,陣痛が始まって然るべき妊婦には陣痛誘発を試み,児が娩出すべき時刻に出て来ない時は,吸引,切開,クリステル等を試み,切ったり,切れたりした会陰部は原形に近い形で修復させる。"安全なお産"のパッケージの中に,一人一人のお産を包みこむために夢中だったように思う。
その中での看護とは,陣痛促進剤を誤りなく用いることや,陣痛,児心音の監視といった部分が多かった。そして,分娩第1期が遷延すれば,助産婦として行うべき何かが抜けているのではなかろうか,内診所見は確かなものだったのだろうかと悩み,第2期が遷延すれば,努責の指導が下手なのだろうか,第1期に体力を消耗させすぎたのだろうかと悩む。さらに,吸引等が行われる状態に至った時,それまでの自分の援助行為のまずさの集結された結果を見る思いでお産は終わる。深く切れた会陰を見る時は,平均以下の答案用紙をもらう心境に似ている。
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