連載 とらうべ
未熟児医療の展開にむけて
柴田 隆
1
1聖隷浜松病院小児科
pp.805
発行日 1979年12月25日
Published Date 1979/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205638
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「小さな未熟児は、せっかく育てても不幸な子どもが多くなるばかりか,その家庭をも不幸にしてしまう」と一般の人のみならず識者の間でも言われている。一方,古い助産婦の方から「小さな未熟児をふところに抱いて育て,よい子になっています」と言われることがあります。いずれの言葉も正しいのです。10数年前までの未熟児医療は最小操作と言われており,その時代に養護された出生体重1,500g以下の極小未熟児は死亡例も大変に多く,生存例でもその1/3に脳性小児麻痺を始めとする中枢神経系後障害が報告されており,たしかに不幸な子どもが多くいました。またバイタリテイのある小さな未熟児──臓器,特に肺の成熟した児も一部にあり,ふところで育った子どももあるわけです。
しかし未熟児医療は近年の胎児・新生児学の基礎的研究の裏付けによって大きく変貌している。すなわち呼吸・循環の管理を中心とした集中強化治療へと発展して来た。このような集中強化治療が行われるようになった1960年代の後半(昭和41年以後)になると,極小未熟児の予後は,死亡頻度また後障害発症頻度のいずれも大幅に改善されて来ていることが欧米から報告されるようになった。
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