特別企画 母乳哺育の普遍妥当性
特別寄稿・1
母乳哺育の人間生物学
小林 登
1
1東京大学医学部小児科学教室
pp.582-595
発行日 1979年9月25日
Published Date 1979/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205596
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1.はじめに
地球上には約40億人の人間が居住しているが,その大部分は母乳で育てられた。また現在の地球上の女性のほとんどは母乳哺育を行っているし,行ってきた。こうしてみると,女性の行っている母乳哺育の人間生物学的意義は大きく,栄養源としてみても乳児にとって母乳は世界で最大であり,とくに大多数の乳児にとっては必須のものである。
栄養源に比較的恵まれているわが国の小児科医が,現在わが国でみられている母乳哺育の問題を考えるとき,従来の小児科学の基盤からのみ分析していたのでは決して十分でない。より広い立場からの分析が必要である。現在,われわれは,母乳哺育の意義を栄養学・アレルギー学・発達免疫学・発達心理学などの立場から論じている。それは医学の方法論として当然であろう。しかし,筆者は本特集の総論として,「ヒトの子がその母親のヒトの乳汁(母乳)を飲んで育つ」という生物学的原則から出発して,母乳哺育を人間生物学的に論じてみたい。
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