特別企画 母乳哺育の推進へ向けて
桶谷式手技研修会とその広がり
特別寄稿
人間らしさとしての哺乳を考える
戸田 外穂
pp.464-467
発行日 1978年8月25日
Published Date 1978/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205412
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.哺乳と人工授乳
胎児が1人の新生児として人生のスタートラインにつくと,間もなく,哺乳がはじまる。はじめは,口に乳首が当てがわれてやっと吸いつける有様であるが,新生児はなんとかこの作業をこなそうとする。これはもって生まれた本能──吸啜反射によるもので,新生児は乳首を吸うという吸啜行為の中に,心身の成長を助ける鍵がひそんでいるのを知っているからである。だから,新生児は体の調子が整うと,さっそくこの鍵探しにとりかかる。この作業は,生まれたばかりの新生児にできるただ1つの作業で,新生児は,この原初の行動──自然な哺乳衝動を足がかりに成長のリズムにのろうとする。
概して,作業とは安易なものではない。しかし,生理的作業量と器官の成長発育との間には,ある定まった傾向がある。この進化史的実証を踏襲するために,乳児は自ら苦難を求めようとする。乳児は乳首を吸うことの外に,乳首を噛み,搾り,そして飲み下すという運動をするが,この哺乳類本来の乳飲み行為を経て,ヒトはヒト特有の成長方程式にそった成長をしていく。
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.